
ベンレートとダコニールの違いがわからない



我が家の植物にはどちらの薬剤を選べばよいの?
このような悩みを抱えていませんか。植物を病気から守るため、殺菌剤の使用を検討する人は多いでしょう。なかでも「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」は、家庭園芸から農業の現場まで広く使われる代表的な殺菌剤です。
この記事では、ベンレートとダコニールの基本的な情報から、具体的な選び方・効果的な使い方を解説します。この記事を読めば、あなたの植物に最適な殺菌剤が選択でき、効果的に使用できるようになるでしょう。
筆者の経験談や調べた内容を元にしています。参考に薬剤処理を実施される場合は自己責任でお願いします。


ベンレート水和剤とダコニール1000の基本情報


「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」、この二つの殺菌剤は植物の病気対策において知名度が高いです。成分や効果のメカニズム、得意とする病害の種類は異なります。
それぞれの違いを順番に見ていきましょう。
ベンレート水和剤は幅広い病気を抑える万能殺菌剤


ベンレート水和剤の有効成分「ベノミル」は、ベンゾイミダゾール系の殺菌剤に分類され、病原菌の細胞分裂を阻害することで効果を発揮。植物体内に浸透して内部で効果を発揮する「浸透移行性」を持ちます。散布後に伸びてくる新しい葉や、薬剤のかかりにくい部分にも効果が期待できるでしょう。



筆者宅では、塊根植物の植え替え時に使用しました。
予防効果だけでなく、すでに発生してしまった病気の進行を抑える治療効果も持ち合わせているため、幅広い場面で頼りになる殺菌剤です。
たとえば、バラの黒星病・うどんこ病・野菜の灰色かび病など、多種多様な病気に効果的。希釈液を土壌に灌注し根から吸収させる方法でも使用可能です。ただし、耐性菌の発生を防ぐため、他の薬剤とローテーション散布するなどの対策が推奨されます。
ベンレート水和剤は、多様な病害に対応できる信頼性の高い治療兼予防薬でしょう。
使用の際は、対象作物や病害に応じた希釈方法を必ず製品ラベルで確認してください。
ダコニール1000は耐性菌対策に強い定番殺菌剤


ダコニール1000の有効成分は「TPN(テトラクロロイソフタロニトリル)」で、有機塩素系の殺菌剤です。ベンレートとは異なり植物体内に浸透せず、葉や茎の表面に付着して病原菌の侵入を防ぐ「保護殺菌剤」として作用します。
病原菌の細胞内で複数の酵素を阻害する多作用点を持ち、特定の作用点だけを攻撃する薬剤に比べて耐性菌が出にくいのがメリットです。



ダコニール1000は50年以上にわたり全世界で使用されていますが、薬剤耐性菌が問題となった事例は報告されていないんです!
有効成分のクロロタロニルは植物表面での残効性が長く、効果が持続しやすいのも特徴。展着剤との相性もよく、適切に添加すると薬剤の付着性が向上するため雨に強くなります。
梅雨時期などに発生しやすい「べと病」への効果に高い評価が◎。ただし、高温時や一部の作物では薬害の恐れがあるため、使用濃度や時期には注意が必要です。
ダコニール1000は、耐性菌対策や病気の予防に力を発揮する殺菌剤でしょう。
使用の際は、対象作物や病害に応じた希釈方法を必ず製品ラベルで確認してください。
【一覧比較】「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」の違いと選択基準


「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」には、それぞれ違いがあります。特徴を以下の表にまとめました。
特徴 | ベンレート水和剤 | ダコニール1000 |
---|---|---|
有効成分 | ベノミル | TPN(クロロタロニル) |
系統 | ベンゾイミダゾール系 | 有機塩素系 |
作用性 | 浸透移行性(予防・治療) | 保護作用(予防) |
作用点 | 単作用点(細胞分裂阻害) | 多作用点(複数酵素阻害) |
耐性菌リスク | やや高い | 低い |
主な適用 | 幅広い病害(うどんこ病・灰色かび病など) | べと病・炭疽病など |
残効性 | 比較的短い~普通 | 長い |
薬害リスク | 条件により発生の可能性あり | 高温時や一部作物で注意 |
混用適合 | 多くの薬剤と混用可能(要確認) | 注意が必要な組み合わせあり(石灰硫黄合剤との混用は避ける) |
選択基準としては、まず病害の種類と発生状況です。予防が主体で耐性菌を避けたい場合は「ダコニール1000」、すでに発生しており治療効果も期待したい場合は「ベンレート水和剤」という使い分けが基本です。
次に使用コストと入手性。一般的に家庭園芸用の小袋パッケージと農業用の業務用大容量パッケージがあり、使用頻度や規模に応じて選ぶとよいでしょう。「ベンレートとダコニールの違い」を理解することが適切な薬剤選択の第一歩です。
有効成分はチオファネートメチル。植物体内でベノミルと同様の物質に変化するため、作用性や効果はベンレートとよく似ています。
「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」の失敗しない3通りの選び方


「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」、どちらの殺菌剤を選ぶべきかは、あなたの植物が置かれている状況によって異なります。ここでは失敗しないための3つの選び方を紹介します。
順番に見ていきましょう。
①作物別に選ぶ|薬害リスクを最小化
薬剤を選ぶうえで基本的な視点は、「どの作物に使用するか」です。薬剤には作物との相性があり、特定の植物には薬害が出やすかったり、効果が薄かったりする場合があります。
野菜や果樹では登録されている病害・使用時期・希釈倍率が細かく定められており、灰色かび病には「ベンレート水和剤」、べと病には「ダコニール1000」といった使い分けが一般的です。



希釈率は植物によって異なるため、最初は標準倍率から始めるのが安心!推奨希釈率は必ず製品ラベルで確認しましょう。
多肉植物や室内の観葉植物に使用する際は、とくに薬害に注意が必要です。いきなり株全体に散布せず、一部の葉で試してから使用するなど慎重な対応が薬害を避けるコツでしょう。
②症状別に薬剤を変える|防除成功率が大幅アップ
薬剤を選ぶ際、次に重要なのは「どのような症状が出ているか・どのような病気を予防したいか」という視点です。薬剤にはそれぞれ得意な病気があります。
たとえば、葉に白い粉を吹いたような症状が見られる「うどんこ病」や、花や果実が灰色のかびに覆われる「灰色かび病」には、浸透移行性と治療効果が期待できる「ベンレート水和剤」が有効な場合があります。
一方、葉に黄色や褐色の斑点ができ、裏にカビが生えるような「べと病」や、黒い小さな斑点が広がる「炭疽病」の予防には、保護効果が高く耐性菌の出にくい「ダコニール1000」が適しているでしょう。



「ダコニール1000」は多くの作物でべと病に対する登録があり、予防効果が期待できます。
症状・病名例 | 推奨薬剤候補 | 備考 |
---|---|---|
うどんこ病、灰色かび病 | ベンレート水和剤 | 浸透移行性、治療効果も期待 |
べと病、炭疽病 | ダコニール1000 | 保護効果、耐性菌リスク低減 |
さび病 | ダコニール1000 | 予防散布 |
菌核病 | ベンレート水和剤 | 発生初期の治療、土壌灌注も有効な場合あり |
病害の初期症状を見逃さず、過去の発生履歴も記録しておくと症状に合った薬剤を選ぶ参考となり、防除成功率を大幅に高められるでしょう。
③使用シーン別で選ぶ|効果を最大限に引き出す
薬剤の使用方法は、葉面散布だけではありません。アガベなどの多肉植物や、根元からの病気が心配な場合には多様な使用方法が効果的な場合があります。
たとえば、アガベでは以下のような方法があります。
薬剤 | 方法・効果 | 適応 |
---|---|---|
ベンレート水和剤 | ベンレート風呂:胴切り後の殺菌や植え替え時の根の消毒として、希釈液に一定時間浸す方法 腰水:鉢底から薬剤を吸わせる方法も根に直接薬剤を行き渡らせる方法 | 水に溶かして均一に処理しやすく、根や切り口への局所処理に適している |
ダコニール1000 | 植物表面にとどまって病原菌の侵入を防ぐ保護殺菌剤のため、葉面全体に均一に散布する方法 展着剤を併用すると効果が安定し、雨の多い時期に有効 | 展着性が高く、粉剤や液状で葉にしっかり付着させる広範囲処理に適している |
室内での散布は薬剤の臭いや壁・床への付着が気になることがあるため、ベランダや屋外で使用したり、換気を十分におこなったりするなどの対策が必要です。
「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」は、使用シーンに応じて使い分けると薬剤の効果を最大限に引き出せるでしょう。
「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」の効果的な使い方


殺菌剤を効果的に使用し、かつ耐性菌の出現リスクを抑えるためには混用やローテーション散布の知識が不可欠です。
薬剤の混用は複数の病害に同時に対応できたり、効果を高めたりする可能性がある一方、薬害のリスクや効果減退の可能性もはらんでいます。
順番に解説します。
ベンレートとダコニールは原則混用NG!時間差散布で安全に使いわける
ベンレートとダコニールを安全かつ効果的に使うには、混ぜずに散布する日をずらす「時間差散布」をおこなうとよいでしょう。
多くの農薬メーカーの混用事例表を参照すると、「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」の混用は一般的に推奨されていません。これは、薬剤同士が化学反応を起こすことで効果が低下したり、薬害が発生しやすくなったりするリスクがあるためです。



さらに、展着剤の種類・希釈液のpH・水質など、さまざまな要因が影響して沈殿や分離といった物理化学的な不適合が生じる可能性もあります。
たとえば、今日はベンレートを散布し、数日~1週間程度の間隔をあけてからダコニールを散布するという方法があります。お互いの薬剤効果を邪魔せず、薬害の心配もグッと減らせるでしょう。
ベンレートとダコニールは、安易に混ぜて使うのは避けて安全な「時間差散布」で上手に使い分けましょう。散布前には、製品ラベルに記載されている混用情報を必ず確認してください。
トップジンMを組み合わせた3剤ローテーションで耐性菌を防ぐ
耐性菌の発達を防ぐためには、作用性の異なる薬剤を順番に使用する「ローテーション散布」が基本です。
「トップジンM水和剤」は、有効成分がチオファネートメチルであり、植物体内でベンレートと同じ有効成分(カルベンダジム)に変化するため、作用性はベンレートとほぼ同じ(MBC剤:FRAC1)です。一方、ダコニール1000(有効成分TPN:FRACコードM5)は異なる作用性を持ちます。
効果的なローテーションの例は以下のとおりです。
ベンレート(またはトップジンM)→ ダコニール → 別の系統の殺菌剤(例:EBI剤など)
少なくとも3種類以上の異なる作用性の薬剤を、7~14日間隔で順番に使用するプログラムを組むのが理想的です。
特定の薬剤に耐性を持つ菌が増えるのを防ぎ、長期間安定した防除効果を維持することが期待できます。病害の種類や発生状況に応じて、使用方法を適宜調整しましょう。


腰水や土壌消毒テクで根元まで殺菌して再発ゼロへ導く
葉だけでなく、根や株元から侵入する病原菌対策も重要です。水はけの悪い用土や過湿条件では、根腐れや立枯病などの土壌病害が発生しやすくなります。
「ダコニール1000」は基本的に保護殺菌剤として使われるため、腰水処理のような土壌浸透を目的とした使い方では、効果が限定的。土壌用としての登録がない場合も多く、使用には注意が必要です。



「ダコニール1000」を土壌表面に散布する方法は株元付近の病害予防には一定の効果が期待できるものの、土壌内部までの浸透効果は乏しいです。
一方、「ベンレート水和剤」は浸透移行性があるため、土壌灌注によって根から吸収され、植物全体を保護する効果が期待できます。とくに植え付け時や、生育初期の苗立枯病予防などに有効です。
アガベの胴切り後のように、切り口から直接病原菌が侵入しやすい場合には、ベンレートの粉末を直接まぶす処理がおこなわれることも。根元まで殺菌する腰水や土壌消毒で、病害の再発ゼロを目指しましょう!
アガベにオススメの「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」の使い方


室内で育てる植物として、観葉植物だけでなくアガベやパキポディウムといったコーデックス(塊根植物)も人気があります。これらの植物は、適切な管理をおこなえば丈夫ですが、胴切り後の切り口や植え替え時の根の傷みから腐敗が始まることも少なくありません。
アガベにベンレートとダコニールを使用する方法・効果は次のとおりです。
それぞれ解説します。
ベンレート風呂で切り口を清潔に保つ
アガベの胴切り後や、輸入ベアルート株の植え付け前処理として、「ベンレート風呂」と呼ばれる殺菌処理がおこなわれています。
ベンレート水和剤を1000〜2000倍程度に希釈した液に株全体または、切り口や根の部分を約30分〜1時間浸漬する。
※アガベは非登録作物のため自己判断で使用しましょう。
ベンレート風呂は切り口や傷口からの雑菌の侵入を防ぎ、腐敗リスクを低減させます。アガベにベンレートの粉末を直接塗布する方法もありますが、均一な処理や薬剤の飛散を考えると希釈液への浸漬のほうがより安全に処理できます。



浸漬処理後は余分な水分をよく切り、風通しのよい日陰でしっかりと乾燥させましょう!
乾燥が不十分なまま植え付けると、かえって腐敗を招く原因になります。乾燥期間は数日から1週間が目安で、その後清潔な用土に植え付けます。植え付け前のひと手間が、株の健全な発根と成長を大きく助けてくれるでしょう。
ダコニールで発根期の腐敗を防ぐ
胴切り後や植え替え後、アガベが無事に発根するまでは、とくに腐敗しやすいデリケートな時期。この時期に有効とされるのが保護殺菌剤「ダコニール1000」の活用です。
- 希釈倍率:1000倍
- 散布対象:株全体・成長点や葉の付け根
- 散布頻度:7〜10日に一度
- 散布開始時期:胴切り後・植え替え後・傷口が乾いた数日後
- 展着剤の使用:必要に応じて適合する展着剤を少量加える
空気中の雑菌による二次感染や、過湿環境下で発生しやすい病原菌の感染を抑え、葉の腐敗を防ぐ効果が期待できます。胴切り直後や植え替え直後は傷口がまだ癒えていないため、数日置いてから最初の散布をおこなうとよいでしょう。
ダコニール1000は、展着剤を添加しなくても比較的葉面に付着しやすい薬剤ですが、より効果を高めたい場合は適する展着剤を少量加えることも可能です。
噴霧器は霧が細かく、均一に散布できるものを選ぶと薬剤の効果を最大限に引き出せます。加湿を避けつつ丁寧な管理を心がけましょう。
ベンレートとダコニールの危険性と安全な使い方・処理方法


「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」は、いずれも農薬取締法に基づく登録済みの殺菌剤のため正しい使用であれば安全に利用できます。
ただし、粉末の吸引や原液との接触は避け、作業時にはマスク・手袋・長袖などの保護具を着用しましょう。散布後は人やペットの立ち入りを控え、室内使用時は換気の徹底が大切です。
発がん性に関しては、国際がん研究機関(IARC)が物質ごとのハザード(潜在的有害性)を評価していますが、これは日常使用時のリスクを示すものではありません。



定められた使用方法を守ればリスクは低いとされています。
使用後の希釈液や容器洗浄水は下水に流さず、土壌に散布するか、新聞紙などに吸わせて可燃ゴミとして処分しましょう。処理方法は地域の自治体ルールにしたがうことが基本です。
まとめ|ベンレートとダコニールの違いを理解して最適な殺菌剤を選ぼう
これまで、ベンレートとダコニールの基本的な違いから、具体的な選び方・使い方、さらには安全性に至るまで詳しく解説しました。あなたの植物と状況に最適な殺菌剤を選び、効果的に病害対策をおこないましょう。
あらためてポイントを整理します。
<ベンレート水和剤>
- 浸透移行性で予防・治療効果が期待できる。
- うどんこ病や灰色かび病など、幅広い病気に対応する。
- 耐性菌に注意が必要になる。
<ダコニール1000> - 保護作用で予防効果が期待できる。
- べと病、炭疽病などに対応する。
- 耐性菌が出にくく、残効性が長い。
最終的には、育てている植物の種類・発生しやすい病気・栽培環境などを総合的に考慮し、それぞれの薬剤の特性を活かした使い方が大切です。
この記事を参考に、あなたのガーデニングライフがより豊かで実りあるものにしてください。最適な薬剤を選び、今すぐ大切な植物のケアを始めましょう!
「ベンレートとダコニールの違い」でよくある質問
「ベンレート水和剤」と「ダコニール1000」の違いについてまとめました。
- ベンレート水和剤は何に効く?
-
ベンレート水和剤(有効成分ベノミル)は、うどんこ病・灰色かび病・菌核病・黒星病など広範囲の糸状菌による病気に効果的な殺菌剤です。植物体内に浸透移行するため、予防効果と治療効果を兼ね備えています。野菜・果樹・花き・芝など多くの植物に使用可能です。
- ダコニール1000はべと病に効きますか?
-
はい、ダコニール1000(有効成分TPN)は多くの作物でべと病に対し優れた予防効果を発揮します。保護殺菌剤として病原菌の侵入を防ぐため、発生しやすい時期の少し前から7~10日間隔で定期的に散布するとよいでしょう。耐性菌が出にくいですが、他剤とのローテーション散布でより効果を持続できます。
- ベンレートとダコニールではどちらがアガベ向き?
-
アガベへの使用は目的で使い分けます。胴切り後の切り口や根の殺菌には、浸透移行性のベンレートが適し、「ベンレート風呂」(希釈液に浸漬)が有効です。一方、葉や株全体の病気予防・発根管理中の腐敗防止には、保護効果の高いダコニール1000の定期的な噴霧もよいでしょう。
どちらの薬剤も推奨希釈倍率を守り、最初は目立たない部分で試すなど薬害に注意して慎重に使用してください。